用語集
- 刑事事件・民事事件
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罪を犯した人に対して国がその罪を問うのが刑事事件です。
人と人が争うのが民事事件です。
例えば人に怪我をさせてしまった場合,刑事事件として警察に逮捕され,傷害罪として起訴され,最悪の場合懲役刑が言い渡される可能性があります。
また,それとは別に,民事事件として被害者の方から損害賠償を求められる可能性があります。
刑事事件で不起訴になったとしても,民事事件の責任がなくなるわけではありません。
逆に民事事件が示談等で解決している場合でも,刑事責任がなくなるわけではありません。
ただし,刑事事件においてその情状が考慮される場合があります。
- 国選弁護人と私選弁護人
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被疑者・被告人自身やご家族が刑事弁護を行ってもらうために選任した弁護士を私選弁護人,国が選任する場合を国選弁護人といいます。
費用の問題などで,私選弁護人に依頼できない場合,国選弁護人が国の費用で選任されます。
国選弁護人が付くのは,逮捕されている事件では勾留後から,逮捕されていない事件では起訴後からですので,逮捕直後や在宅事件の起訴前では国選弁護人による刑事弁護は受けられません。
私選弁護人を選任すると,身柄事件では勾留前,在宅事件では起訴前の早い段階から弁護人に相談でき,今後の取調べに向けたアドバイスなどの刑事弁護を受けることができます。
また刑事事件の被害者との示談などを進め,起訴される前に釈放を求めるような刑事弁護活動を行うこともできます。
- 当番弁護士
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当番弁護士とは,刑事事件で逮捕された被疑者やその家族知人が,弁護士会に依頼することによって呼ぶことができる弁護士のことをいいます。
初回の接見は無料で,アドバイスや法律の相談を行います。
その際に当番弁護士を私選弁護人として選任することも可能です。
- 被害届と告訴
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被害届とは,警察等捜査機関に対して,このような事件の被害にあいましたと告知する書面です。
告訴は被害者やその代理人等が行うもので,処罰を求める意思表示です。
一部の親告罪は告訴がなければ起訴されませんし,起訴前に告訴の取下げがあれば,起訴の前提条件がなくなるため,釈放されます。
- 示談
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示談とは,被害者との間の民事上の問題について話し合いで解決することです。
損害賠償金,和解金,慰謝料などを支払い,謝罪を受け入れてもらい,示談を締結することで,刑事事件においてその情状が考慮される可能性があります。
また,一部の親告罪では告訴が起訴の条件となるため,起訴前であれば,告訴取下げを示談の条件として被害者側と話し合いを行います。
- 留置
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留置とは,逮捕後,警察官による取り調べのために,身柄を拘束されることです。
警察官は,逮捕後48時間以内に送検するか釈放するかを判断します。
送検された場合,検察官は24時間以内に勾留か釈放かを判断します。
取調べのために身柄が拘束されると,最長72時間,警察の留置場に入ることになる可能性があります。
- 供述調書,弁解録取書
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供述調書とは,被疑者・参考人などの供述を元にまとめた書面一式のことをいいます。
供述調書のうち,被疑者の弁解をまとめたものを弁解録取書といいます。
供述調書は裁判で極めて有力な証拠として扱われる可能性が高いものです。
供述調書に書かれた内容を,裁判で修正を求めるのは相当の時間と労力が必要となる上,なかなかうまくいきません。
自分の主張と違う記述がされている場合は修正を求めるなど,正確な調書作成のため,警察官に言い分を理解してもらう努力はとても重要です。
- 勾留
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勾留とは,送検から24時間以内に検察官の請求により裁判所が決定するものです。
勾留が決定すると拘置所に移送されるのが原則ですが,運用上,代用監獄としてそのまま留置所に勾留されることも多くあります。
検察官が起訴(不起訴)を判断するまで,最長20日間勾留される可能性があり,起訴された場合は,裁判が終わるまで引き続き勾留の可能性があります。
不起訴の判断がされた場合,すぐに釈放されます。
また,起訴後の勾留には,一部の重大な犯罪を除き,保釈請求を行うことができ,一旦勾留を解くことが出来る場合もあります。
- 接見
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接見とは,拘束されている人が外部の人と面会したり,差入れを受け取ったりすることをいいます。
ご家族を含む一般の方との接見は,証拠隠滅の恐れ等を理由として,立会人同席の上会話を記録することもあり,場合によっては接見そのものが禁止とされる場合もあります。
弁護士との接見は,その権利が保証されており,立会人もいない状態で,原則としていつでも接見することが許されています。
ご依頼者様と今後の方針について相談し,そのために何をなすべきなのか,しっかりと打ち合わせを行います。
また,ご依頼者様からの伝言をお預かりしてご家族にお伝えしたり,ご家族からの差入れを仲介したりすることも可能です。
- 送検
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送検とは,被疑者の身柄と捜査書類を,警察官から検察官に引き渡すことです。
送検は警察官による逮捕後48時間以内に行うことになっており,逮捕・勾留の必要がない事件の場合,捜査書類のみを検察官に送る,書類送検という手続が取られます。
送致を受けた検察官は24時間以内に勾留するかどうかを決定し,勾留しないと判断した場合すぐに釈放されます。
- 起訴
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起訴とは,検察官が裁判所に訴えを提起することです。
起訴前は被疑者という立場ですが,起訴後は被告人という立場になります。
起訴後は保釈の請求が可能です。
保釈が認められれば,身柄が解放されます。
- 不起訴
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不起訴とは検察官が起訴しないと判断することです。
犯罪の嫌疑がない場合は嫌疑なしとして不起訴になります。
捜査の結果,証拠が不十分の場合嫌疑不十分として不起訴になります。
犯罪の軽重や反省の態度,被害者への謝罪などの情状を考慮し,起訴の必要がないと検察官が判断した場合,起訴猶予として不起訴になります。
- 釈放
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釈放とは,身柄が解放されることをいいます。
例えば,犯罪の証拠がない場合,または不十分な場合や,被害者への謝罪,賠償等反省や更生の意欲が見られ,起訴の必要がないと判断された場合,不起訴処分となり釈放されます。
- 保釈
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保釈とは,保釈金を収めることで,いくつかの制限はあるものの,一旦解放される手続です。
保釈は起訴後に行われる手続で,保釈が認められても裁判は行われます。
保釈が認められれば,裁判に向けて弁護士と十分な打ち合わせを行うことができます。
裁判所という非日常の場で,自身の思いを裁判官に訴えるのはなかなか難しいものですが,保釈が認められれば,どのような質問がされそうなのか,どのように対応すべきなのか,事前に十分に時間をかけて検討できるという大きなメリットがあります。
- 執行猶予
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その名のとおり刑の執行が猶予されることです。
裁判官は,被害者への謝罪,賠償等反省や更生の意欲が見られるなど諸事情を考慮し,情状酌量により執行猶予付判決を出す場合があります。
猶予期間内に他の刑事事件を起こさなければ,言い渡し自体の効力が失われます。
- 前科
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前科とは,以前に法律による刑罰を受けていることをいいます。
法律による刑罰を受けると,犯罪人名簿に登録されることがあります。
犯罪人名簿に記載されると選挙権・被選挙権や資格,海外渡航などが制限される場合があります。
前科が付かずに済むには,不起訴の獲得,裁判によって無罪の獲得など,有罪にならないための弁護活動が重要となります。